GISと不動産鑑定

既に不動産鑑定業界では、様々な地理情報の活用が行われています。

地価公示価格や地価調査価格の閲覧、都市計画情報等の各種公開データの活用、業務用ソフトウェアにおける取引事例資料の作成・活用、最寄駅までの距離計測・・・
地理情報なくして鑑定評価無し」といっても過言ではありません。

しかし、現状における地理情報の活用は、特定の1~2地点の評価を行うための『情報収集』がメインで、複数地点(数十または数百)の地価動向や価格特性の『面的な解析』に活用されるには至っていません。
せいぜい、複数の公示地や取引事例地の情報を『地図上に表示』させる程度にとどまっています。
このように『面的な解析』が定着していない最大の理由は、不動産鑑定業務では、各種地理情報の「閲覧ソフト」の使用が中心で、「解析ソフト」の使用が定着していないためであると考えています。
実際、現状で複数地点の面的な検証(解析)を行う際には、経験即に依存しつつ、何枚もの紙地図を繋ぎ合わせて手書きで分析を行うなど、アナログ的な分析が中心になっています。

アナログ的な分析は、一時点の分析には対応できても、複数年度で変化する地理情報を反映させながら、継続的に分析結果を更新することに馴染まなかったり、分析に要する時間や紙のロスが大きいことなどの問題点があります。
また昨今ではオンラインでの価格検討会議などが行われる場面が増えましたが、手持ちの大型の紙資料は会議参加者でのオンラインの共有がほぼ不可能という問題点もあります。

そこで、わたしは不動産鑑定業務に『面的な解析』を定着させ、「標準化された分析モデルで継続的な価格動向分析を行う」ことを目的として、『GISと不動産鑑定プロジェクト』を始動させることとしました。
使用するソフトは、フリー(無料)のGISアプリケーションである「QGIS(キュー ジー アイ エス)」(https://qgis.org/ja/site/)です。
これに国土数値情報などのフリー(無料)の地理情報を搭載して行う分析を基本とします。

□QGISの画面イメージ

□国土数値情報

実はわたしはGISについては全くの初心者です。なので、現時点では、3年間での目標到達を目指します。
概ね3年後には、以下の業務活用を図ることを目指し、これから日々奮闘していきます。
<3年後までに目指す主な姿>
・【地価検証地点の面的な分析】複数評価地点のバランス検証(代表標準地群や駅勢圏など)
・【時系列的な地価動向の分析】地価情報の時系列な傾向分析(取引の量、価格動向など)
・【価格形成要因データの分析】人口動態、交通インフラ、災害リスクなどと価格動向への影響度分析